COUNTER BREAK

ブイさんと本と映画などの記録。

人間失格

映画に備えてもう一度読み直してみました。
前に読んだのが高校生のときなので(15年も前…)ほとんど内容を忘れていた。
読み直してみて、この年になってから感じるものもあった。
ここまでの有名作品の感想を書くのは難しいのですが…。

名作と呼ばれる作品は、何度読んでも新しい発見が出来るものなのかなと。
一度目に読んだときは自分も思春期真っ只中で、葉蔵の気持ちに共感と同時に嫌悪があった。
再読したときには、嫌悪じゃなくて、愛しい気持ちになった。
誰かの期待に応えたい、人に好かれたい。
誰でも持つ気持ちが、葉蔵は人より大きかった。
エヴァを改めて見たときにも思ったけど、シンジを「いい子だね、大丈夫だよ」と頭を撫でてあげたくなるような気持ち。
ずっと思春期の少年みたいな葉蔵。
女が放っておけないのが分かります。

激しい自己嫌悪と自己愛の間で悩み傷ついていく葉蔵。
人が大人になる過程で捨てていかざるをえない純粋さを、彼はずっと持ち続けていたのではないだろうか。

自分を「恥の多い人生を送ってきたダメ人間」だと言う葉蔵に対し、最後の一文は真逆の事を書いてある。
哀しい物語の最後にこの一文があることで救われる。


人の記憶に鮮烈に残る人たちは、心の中に柔らかいダイヤがあるような気がする。
物凄く綺麗だけど、傷つきやすくて脆い。
純粋すぎる人には生きにくい世の中だから、彼らは人より早く旅立ってしまうのかなと。

この本を読んだ後に、ふと尾崎豊さんを思い出しました。
死後、尾崎さんの歌う姿をテレビで見たときに「生きていくのが辛そうな人だ」と思った。あの時と同じように切なくなった。