COUNTER BREAK

ブイさんと本と映画などの記録。

消された一家 ―北九州・連続監禁殺人事件

先日犯人の男性に死刑、女性に無期懲役の判決が出た事件。
裁判を傍聴した作者が、事件を淡々と描いていきます。
凶悪な犯人がたくさんの人を殺す事件より、この事件は怖ろしい。


犯人は一切手を下さず、家族に殺させ、死体を解体、隠蔽させる。
大の大人が数人いながら、一人の男に逆らえなかったという怖さ。
徐々に普通の状態じゃなくなっていくのに、その手から逃げられない。
この男が人間じゃなければまだ納得がいく。しかし彼は人間なのだ。
20歳からずっと支配されていた女性は、逮捕された事で自分を取り戻し、男の異常さに気づく。
後書に書かれていたが、彼女が刑務所での生活を「毎日眠れて、毎日ご飯が食べられる」と語っている。彼女の数十年は人としての全てを奪われていたのだ。
彼女は加害者でもあるが、また被害者でもある。罪は多いが、悪人だとは決め付けられないものを感じた。
怖いしグロテスクな部分も多いですが、人に薦めたい一作。
人はマインドコントロールによりこんなにも狂わされる、という事を知っておく事が、自分を守ることになるのではないか。