COUNTER BREAK

ブイさんと本と映画などの記録。

天地明察

 大和暦を完成させた渋川春海が主役の物語。
 碁の名門に生まれながら、算術、天文、神道を学び、幾度もの失敗を経てついに大和暦を作成する。

 暦ってあって当たり前、これを作って何が変わるのか? と思ってたんですが、暦を作るということは日付を作る事。


たかが暦だと何度も自分に言い聞かせねばならなかった。そして、されど暦だった。
今日が何月何日であるか。その決定権を持つとは、こういうことだ。
宗教、政治、文化、経済―全てにおいて君臨するということなのである。
(本文より)


 天皇陛下も将軍も、日付で動く。
 暦を作れば、新たなルールを作る事になる。
 その大仕事に任命された春海。
 主役の春海は碁打ちの名門に生まれながら、真剣勝負も出来なくなっている碁に飽き気味で、最近では算術に熱中していた。
 春海は良く泣く。年下からも女性からもよく怒られる。熱中すると周りが見えない。
 カッコよさとは程遠い主人公だが、愛嬌があって見ていると応援したくなる真摯で一途な男だ。

 彼の出会う才能溢れる人々は、大きな理想と信念がある。
 道半ばで去っていく彼らから 「頼みましたよ」 と、夢を託される春海は「頼まれました」と、それを抱えひたすらに進んでいく。
 春海は天才的カリスマではない。優秀だが、ぐいぐい引っ張るタイプではない。
 その分、人の話を良く聞き、人を大事にし、人の教えを素直に聞く。
 現代の上司に求められる資質ではないのかな?と思ったりもしました。


 歴史としても面白く、また算術、天文、碁、師と弟子など様々な要素があり読み応えが凄いです。
 そして、あちこちで涙ぐむ……。
 春海が泣く場面では、一緒になって泣く。

 とっても面白い本でした。
 書店員さんが選ぶ本屋大賞になっただけあります!

 岡田主演で映画化という噂がありますが…。
 春海がものすごく魅力的な主人公なので、本当だったらいいなぁ。
 この春海って熱中すると口が開いてそうなので、ぴったりだと思います(笑)

「からん、ころん」と絵馬が鳴るシーンを最初に持ってきていて、主人公の春海にとって大きなことが起こるたび「からん、ころん」と音がする。
 映像にしたときとても印象的なシーンになりそう。